更新日:2024/9/19
「急に愛猫がカリカリを食べなくなってしまったけど、どうすればいいのか」
「ただのわがまま?それとも病気?」
愛猫が急にカリカリを食べてくれなくなってお悩みの方に向けて、カリカリを食べなくなる理由と対応策、どれくらい放置すると危険なのかなど、獣医師が解説します。
猫が急にカリカリを食べない時の理由3選
猫が突然カリカリを食べなくなる理由は主に3つに分けられます。
まず、猫自身の理由が考えられます。次に、カリカリそのものに関する理由、最後に猫を取り巻く環境に起因するものです。
猫が食事を拒否する背景には様々な要因が絡み合っていることが多く、それらを理解することで適切な対策が可能になります。
①猫自身の要因
猫自身に理由がある場合、いくつかの例が考えられます。例えば、猫が同じカリカリに飽きてしまった場合、食欲が低下することがあります。
また、発情期に入ると食事への興味が薄れがちです。加齢による視覚や嗅覚の衰えも、食の好みに影響を与える要因です。
さらに、おやつの与えすぎで満腹になっていないか、病気が原因で食欲が落ちていることも考えられます。病気の場合、環境の変化が影響しているケースもあるため、注意が必要です。
②ごはん・餌の要因
カリカリ自体に理由がある場合もあります。例えば、時間が経ち冷えてしまっている、匂いが薄れている、またはいつもと異なる匂いがすることが原因で猫が食事を拒むことがあります。
特に猫は食べ物の匂いに敏感なので、わずかな変化でも食欲が失われることがあります。
また、保管状態によってカリカリの風味が損なわれていることもあります。カリカリが酸化して風味が悪くなると、猫が食べたがらない原因となることもあるようです。
③環境の要因
猫は非常に環境の変化に敏感な動物であり、その影響が食欲に直結することがあります。例えば、引越しや模様替え、新しいペットや家族が加わった場合、猫はストレスを感じ、いつものカリカリを食べなくなることがあります。
また、動物病院での診察やペットホテルからの帰宅後も、一時的に食欲が減退するというケースもよく聞きます。食事をする場所が騒がしい、他の動物や人間の干渉が多い場合も、猫は安心して食べられないことがあります。
このため、猫が落ち着いて食事をできるように静かな場所を選び、可能な限り環境の変化を少なくする工夫が必要です。猫の性格に合わせた環境作りが、健康的な食欲の維持につながります。
猫が急にカリカリを食べなくなった時の対応策5選
飼い主さんができることとしては、まず何とか食べてもらうことを目標にすることです。カリカリを工夫し、食事環境を整えてみましょう。
①カリカリを温める、ふやかす
カリカリは保存方法や時間によって匂いや風味が損なわれることがあります。そのため、少し温めたり、ふやかすことで本来の風味を復活させることが効果的です。
具体的には、いつものカリカリに少量の水を含ませて、レンジで人肌程度に温める、またはお湯を注いでラップをして5分ほど待つなどの方法があります。猫の食欲は特に匂いに依存する傾向が強いため、この方法は効果的です。
②別のものをトッピングする
カリカリに飽きた場合には、別のフードをトッピングするのもおすすめです。トッピングを加えることで、いつもの食事に新鮮な風味が加わり、猫の興味を引くことができます。
ふりかけタイプ、ウェットフードやゼリーを少量混ぜるなどの方法が効果的です。実際に、トッピングをしたカリカリだけを猫が食べるケースも多く見られます。
ただし、過剰にトッピングを加えると、猫が偏食になるリスクもあります。また、トッピングだけで栄養を摂取してしまうと、本来のカリカリを食べなくなる可能性もあります。
したがって、トッピングはあくまで補助的な手段として活用し、猫の食事のバランスを保つことを心掛ける必要があります。
▼私がトッピングとしておすすめする補助食は、犬猫用ゼリー「ジュレッタ」です。
チキンやかつお、たいなどさまざまなフレーバーがあり、どれも犬猫の食欲を刺激します。いつものフードに添えることで補助的な役割を担うでしょう。
また、低カロリー・低塩分なので食事の栄養バランスを崩さない点もおすすめです。
③食器ではなく手から食べさせてみる
猫の中には、食器が変わるだけでも食欲が減退する子もいます。そこで、一度飼い主さんの手から与えると、安心してその後食べるようになってくれるケースもあります。
特に、気乗りしていなかった猫が飼い主の手からカリカリを口にすると、突然スイッチが入ったように食べ始めることもあります。
しかし、手からしか食べなくなってしまうことを避けるため、最初のきっかけとして試してみて、その後は徐々に通常の食器に戻すようにしましょう。
④落ち着ける環境で食べさせてあげる
猫にとって食事は無防備な時間です。環境の変化によって、食欲が減ることはよくあることです。
猫にはそれぞれ好みの食事環境があります。例えば、一人で静かに食べたい猫もいれば、飼い主が見える場所で食べたい猫もいます。食事の時間にリラックスできるよう、静かな場所を選び、猫の好みに応じた環境を整えてあげることが大切です。
⑤別のフードをあげてみる
上述の方法を試しても猫がカリカリを食べない場合、別のフードを与えてみるのも一つの手段です。
ウェットフードや別の種類のカリカリ、おやつ代わりになるものでもかまいません。そもそも今の時点で食欲があるのかどうかの参考になることがあります。
どのくらいの期間、猫がごはんを食べないと食欲不振?
動物病院での診察時、食欲不振について尋ねられることの一つは、いつから食べていないのかということです。
日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)によると、以下のような期間が食欲不振の目安とされています。
【これ以上持続すれば食欲不振】
年齢 | 食べていない時間 |
1~2か月 | 8時間 |
2~3か月 | 12時間 |
3~4か月 | 16時間 |
1歳以上 | 24時間 |
これはあくまで食欲不振の症状の目安であるため、病気があるかどうかの判断にはなりません。
病気なのかどうかは、他症状の兼ね合いやどのくらいのレベルで食欲が落ちているのか、全く何も口にしないのかといったように、ケースバイケースです。
猫がカリカリを食べないまま放置するとどうなる?
結論から言うと、カリカリ以外の総合栄養食を適量食べれていればあまり心配する必要はありません。
しかし、猫が何も食べない状態を放置すると、健康に重大な影響を及ぼす可能性があります。特に、猫は長時間食事をしないと肝リピドーシス(肝脂肪症)という深刻な状態になるリスクがあります。
猫がエネルギー不足に陥った際に体内の脂肪が肝臓に蓄積され、肝機能が低下する病気です。これは非常に危険で、放置すると命に関わることもあります。
また、低血糖や脱水症状、腎臓の負担が増えることも考えられます。特に子猫や高齢猫、既に持病のある猫は、早期に対応することが重要です。
食欲が減ってから、全く改善されず3日経った場合や、何も食べない食欲廃絶状態が1日半程続いた場合は動物病院を受診してください。
猫が急にカリカリを食べない時に気になること4選
①猫がカリカリを食べないのは、ただの「わがまま」の可能性もある?
猫は食べ物の鮮度や質に敏感で、少しでも味や匂いが変わると食べなくなることがあります。
また、以前に好みのフードをもらった経験があると、それに対して執着し、同じカリカリを食べなくなることもあります。
この場合は食欲がないというわけではないですから、何とか工夫して食べさせたいところです。猫の要求にも応えてあげたい気持ちもありますが、一番大事なのは猫の健康です。
総合栄養食をしっかり食べてもらうためにも、好きなものばかり与えるのは考えものです。日本臨床獣医学フォーラムでは、食べない場合は10分以内に片付けてしまうことを推奨しています。
②猫がカリカリを食べないけど、ウェットフードは食べる時の理由と対応は?
フードや食事環境の工夫をしてみたけれど、どうしてもウェットフードしか食べてくれない場合もあるでしょう。
カリカリを食べないけれどウェットフードは食べる場合、猫が硬さや匂いに対して不満を感じている可能性があります。
ウェットフードは水分が多く、柔らかいため食べやすく、風味も強いことが多いです。この場合、ウェットフードとカリカリを混ぜてみる、ウェットフードの量を少しずつ減らしていくなどの工夫が効果的です。
ただし、猫が本当にカリカリを嫌がっている場合は、無理に食べさせるのではなく、獣医師に相談してみることが良いでしょう。
状況によっては、全く何も口にしない状況が続くよりは、口にしてくれるものを食べてもらうという方針をとった方がいいこともあります。
③猫がカリカリは食べないけどおやつは食べる時の理由と対応は?
猫がカリカリを食べないけれどおやつは食べる場合、おやつが美味しくてカリカリが魅力的でないと感じている可能性があります。おやつの与えすぎは偏食を助長し、栄養バランスが崩れる原因となります。
対応策としては、まずおやつの量を減らし、与えるタイミングを調整することです。おやつはご褒美やトレーニング時のみ使用し、普段の食事として与えないようにすることが重要です。
カリカリに少量のおやつをトッピングする方法も試してみると良いでしょう。
④猫がカリカリを食べない時に考えられる病気は?
口内炎や歯肉炎などの口腔内の問題が原因で食べるのが痛くて避けている場合があります。
また、胃腸炎や腫瘍などの消化器系の問題や、腎臓病、糖尿病なども食欲不振を引き起こすことがあります。
さらに、猫の食欲減退には精神的なストレスも影響することがあります。
これらの病気の可能性を考慮し、長期間食欲がない場合や、嘔吐、下痢、元気消失などが見られる場合は、早急に動物病院を受診することが重要です。
まとめ
猫が急にカリカリを食べなくなる原因は多岐にわたり、猫の体調や性格、フードや環境の変化などさまざまな要因が影響しています。
まずは原因を特定し、適切な対応を取ることが大切です。食事を工夫してみても効果がない場合や、食欲不振が続く場合には、獣医師の診察を受けることをお勧めします。
猫の健康を守るためには、日常的な観察と適切なケアが欠かせません。
著者情報 | 獣医師監修