【保存版】冬に知っておきたい犬猫の下部尿路疾患・尿石症

【保存版】冬に知っておきたい犬猫の下部尿路疾患・尿石症

気温が低くなり、肌寒い季節になってきました。冬の寒さを感じるのは、人だけでなく犬や猫も同じです。この時期、愛犬や愛猫が水をあまり飲まなくなることに悩んでいる飼い主さんも多いのではないでしょうか。また、毎年冬におしっこの問題で動物病院を訪れるケースも少なくありません。

特に、犬や猫がなかなか水を飲まず、トイレの回数が減る冬は、下部尿路疾患や尿石症といった健康問題が発生しやすい時期です。こうした疾患は愛犬愛猫にとってつらい症状を引き起こし、時には命に関わることもあります。

この記事では、犬猫の「下部尿路疾患」や「尿石症」について、飼い主さんが知っておくべきポイントをわかりやすくまとめました。動物病院の診察で、獣医師との会話もスムーズにできるようにぜひ最後までお読みください。

下部尿路とは?

まず、「下部尿路」とはどの部分を指すのかを知っておきましょう。

下部尿路とは、尿を排泄する経路のうち、膀胱と尿道を指します。

尿が通る道筋の下流部分にあたります。この部分に異常が生じると、排尿が困難になったり痛みを伴うことがあります。

特に冬は犬猫が自ら水を飲まないことが多くなります。水分摂取量が減少し、尿が濃縮されやすくなるため、下部尿路に負担がかかりやすい季節です。これが原因で尿路感染症や結石の形成といった問題が発生するリスクが高まります。

犬猫の下部尿路疾患とは?

下部尿路疾患とは、膀胱や尿道に何らかの異常が生じることで発生する一連の病態を指します。以下のような原因によって尿石症と同じような症状を呈する病態の総称です。

  • 尿路結石(尿石症)
  • 細菌感染による膀胱炎
  • 解剖学的な異常
  • 膀胱やその周辺の腫瘍
  • 尿道閉塞

特に猫では、「特発性膀胱炎」と呼ばれる、明確な原因が特定できない疾患が最も一般的です。

この疾患はストレスや生活環境の変化が引き金となることが多く、水分補給を十分に行うことが予防につながると提唱されています。

一方で犬の場合、原因が特定されやすく、尿結石の形成が主な要因となることが多いです。そのため下部尿路疾患という言葉を使うのは猫の場合が一般的となっています。

下部尿路疾患の症状は尿石症と似ていて、尿の色が赤くなる血尿、排尿の回数が増える頻尿、排尿時の痛みや不快感などが挙げられます。これらの症状に気づいた場合は、早めに動物病院を受診することが重要です。

犬猫の尿石症について

尿石症とは、腎臓から尿道にかけての尿路に結石が形成される病気を指します。この結石は、小さなものでは1mm以下から、大きなものでは数cmに及ぶこともあります。結石が尿路を塞ぐと、尿道閉塞という命に関わる緊急事態を引き起こすことがあります。

犬猫の尿石症の原因

尿結石は、初めから石というわけではなく、結晶同士が固まって石になります。つまり、結晶ができにくい状態にしておくことが尿石症予防のカギになります。様々な原因がありますが、飼い主さんが知っておくべき原因は以下です。

  • 結晶ができやすい原因
  • 水の量
  • pH
  • ミネラルバランス
  • 尿路感染

原因を知っておくと、予防や治療の意味がよくわかるかと思います。
水の量は水分摂取量と考えて良いです。フードや飲水からの水分補給が、尿石症の予防や治療につながります。それに加えpHとミネラルバランスは食事で調整が可能です。

犬猫の尿石症の症状

尿石症の症状は、結石がどこに存在しているかによって異なります。

膀胱や尿道に結石がある場合、血尿や頻尿、排尿困難が見られることが多いです。また、尿が完全に出なくなる無尿の状態や、結石が尿道を完全に塞ぐことで激しい痛みが生じる場合もあります。

飼い主さんが気づきやすい具体的な症状としては、次のようなものがあります。

  • 尿に血が混じる。
  • トイレに何度も行くが、尿が出ない。
  • お腹を触ると嫌がる。

これらの症状が見られた場合、速やかに動物病院に相談してください。

結石の種類と特徴

尿石症の原因となる結石にはいくつか種類がありますが、飼い主さんが知っておくべき尿結石2種類に絞りました。特に重要なのは「ストラバイト結石」と「シュウ酸カルシウム結石」です。

①ストラバイト結石

ストラバイト結石は、尿がアルカリ性に傾くことで形成されやすい結石です。この結石は細菌感染が関与する場合が多いです。

また、適切な食事療法や飲水量を増やすことによって結石を溶解することができるという点がポイントです。

ストラバイト結石の治療では、尿路感染症の細菌に対する治療と同時に、尿のpHを正常に保つための療法食を活用することが一般的です。

②シュウ酸カルシウム結石

シュウ酸カルシウム結石は尿が酸性に傾くことで形成されやすい結石です。この結石は溶解することができないため、外科手術が必要になるケースが多いです。

また、ビタミンCの過剰摂取がシュウ酸の供給源となり、結石形成を助長する可能性があるため、フルーツの与えすぎには注意が必要です。

ストラバイト結石以外でも、結石が粘膜を傷つけて最近の温床になり、尿路感染を引き起こすこともあります。

犬猫の尿石症の傾向~もう少し詳しく知りたい方向けに獣医師が解説~

昔はストラバイト結石の方が多かったですが、犬猫の食生活が変わってきたことと、療法食の質が上がったためか、シュウ酸カルシウム結石が増えてきています。

とはいえ、半分半分といった具合です。いずれにしても食事管理や水分補給は重要な予防策といえます。

犬の尿石症の9割以上は膀胱と尿道に、残りはもっと上部の腎盂と尿管(腎臓〜膀胱の間)に結石ができる傾向にあります。

膀胱炎が原因となり、細菌感染によって尿がアルカリ性に傾くことでストラバイト結石の尿石症になるという流れが多いです。療法食とともに抗菌薬を処方されたというわんちゃんも多いのではないでしょうか。

猫の結石は、今まで下部尿路(膀胱と尿道)が多くみられましたが、最近はもっと上部にあたる腎臓や尿管での結石が増加傾向にあります。そのほとんどがシュウ酸カルシウム結石です。

猫の尿石症は食生活や環境要因が深く関与していると考えられています。また、室内飼い猫での運動不足やストレスが特発性膀胱炎(猫の下部尿路疾患で最も多い)のリスクを増加させる傾向があるという研究結果があります。

ちなみに、肉食動物は尿が酸性、草食動物は尿がアルカリ性です。野菜中心の食生活だと尿がアルカリ性に傾きやすいですが、食事全体の栄養バランスや野菜の種類によって例外も見られます。

猫のような肉食動物の場合、タンパク質が多い食生活では尿が酸性に傾きやすいです。手作りフードをあげる際などに参考になるかもしれません。

犬猫の尿石症の予防と再発防止

尿石症は、一度治療を行っても再発する可能性が高い疾患です。早期発見や治療も大事ですが、最も重要なのは予防と再発防止といっても過言ではありません。そのため、日々のケアを通じた予防が非常に重要です。

①水分補給

水分補給は尿石症の予防・再発防止において最も重要なポイントです。清潔な水を常に新鮮な状態で提供するだけでなく、ウェットフードやペット用スープ・ゼリーを活用して水分摂取量を増やす工夫をしましょう。水分摂取量が尿濃縮度に影響して結石リスクに直結します。

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いつものフードに添えて与えるだけで、必要な水分量を摂取できます。「チキン」「かつお」「ヤギミルク」など、豊富なフレーバーが用意してあるのでおいしく水分補給できます。まさに「食べるお水」です。

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②食事療法

再発防止には、結石の種類に応じた療法食を与えることが効果的です。ストラバイト結石の場合は、尿のpHを正常に保つフードを選び、シュウ酸カルシウム結石の場合は尿中のカルシウム濃度をコントロールする食事が推奨されます。

③適度な運動と体重管理

運動不足や肥満は、尿石症のリスクを高める要因です。適度な運動を取り入れ、体重管理を徹底することが予防につながります。運動をすると結石が尿中に出やすくなったり、膀胱で物理的に混ざって溶けやすくなるという説もあります。特に猫にはキャットタワーなどを活用して自然に運動量を増やせる環境を整えると良いでしょう。

④清潔なトイレ環境

特に猫の場合、トイレが汚れていると排尿を我慢する傾向があります。清潔で快適なトイレ環境を整えることでストレスを軽減し、下部尿路疾患の予防につながります。さらに尿路感染のリスクも抑えることができます。

尿石症だった犬猫の飼い主さんからも「水分補給を意識してウェットフードやゼリー、スープを取り入れたら結石が溶けてきました!」 「キャットタワーを設置して運動を増やしたら、毎冬の尿石症が改善されました!」という声も聞きます。参考にしてください。

最後に

冬は特に尿石症が悪化しやすい季節です。しかし、正しい知識を持ち、日々のケアを工夫することで予防や再発防止が可能な疾患です。そして、少しでも異変を感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。
健康で快適な冬をお過ごしください。

監修の獣医師プロフィール 

◆獣医師ニノマユ
獣医師免許を取得後、都内動物病院にて小動物臨床に従事。その後はペット損保会社にて保険査定や犬猫~エキゾチックアニマルまでの健康相談業務などを担当しておりました。現在は、動物業界の課題について広く視野を持ちたいという想いでweb業界にて働いています。大学時代は動物行動管理学研究室に所属。一番好きなのは羊で繁殖~出荷を経験しました。

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