猫の腎臓病でもおやつは食べられる?選び方・与え方の注意点を獣医師が解説

猫の腎臓病でもおやつは食べられる?選び方・与え方の注意点を獣医師が解説

愛猫が腎臓病と診断されたとき、飼い主さんは「もうおやつはあげられないの?」と感じたかもしれません。
腎臓病の猫へのおやつは「完全禁止」ではありませんが、選ぶ成分や与え方には注意が必要です。
本記事では、腎臓病の猫がおやつを食べる際に気をつけたい栄養素・選び方のポイント・水分補給との関係を、獣医師がわかりやすく解説します。

 

腎臓病の猫でも、おやつを完全に禁止しなければならないとは限りません。
ただし、一般的なおやつを自己判断で続けるのではなく、病気のステージや検査値に合わせて、かかりつけの獣医師に相談しながら選ぶことが大切です。
水分量の多いペースト・ゼリー・ウェットタイプのおやつは、水分補給のサポートとして取り入れやすい場合がありますが、成分表示を確認したうえで使用しましょう。

 

腎臓病の猫におやつを与えてもいい?

腎臓病の猫におやつを与えてもいい?

愛猫が腎臓病と診断されたからといって、おやつを一切与えてはいけないわけではありません。
ただし、市販の猫用おやつは嗜好性を重視して作られているため、リンやナトリウムが多いものも多く、そのまま与えると腎臓に余分な負担をかけてしまう可能性があります。

 

おやつは「完全禁止」ではなく「選び方と量」が大切

腎臓病の猫にとって、食べる楽しみは生活の質(QOL)を保つうえでも大切な要素のひとつです。
療法食を基本としながら、腎臓への負担が少ないものを少量だけ与える、という付き合い方を基本に考えていきましょう。

💡一口メモ

QOLとは?

QOL(Quality of Life)とは「生活の質」のことです。病気の治療だけでなく、日常の快適さや楽しみも含めた概念で、猫の腎臓病ケアにおいても重要視されています。

 

病気の進行度によって判断が変わる

腎臓病は進行度(ステージ)によって、食事制限の厳しさが変わります。
初期段階と末期では、許容できるリン・タンパク質の量も異なるため、おやつを与えてよいかどうかはかかりつけの動物病院に確認するのが最も確実です。

注意点
おやつの可否は、病気のステージや個体差によって異なります。必ずかかりつけの動物病院に相談してから与えるようにしてください。

ポイント

  • 腎臓病でも、おやつを完全に禁止する必要はないケースが多い
  • 大切なのは「何を選ぶか」「どれだけ与えるか」
  • 病気のステージや体調によって判断が変わるため、主治医への相談が前提

 

なぜおやつ選びに注意が必要なの?

なぜおやつ選びに注意が必要なの?

腎臓病の猫の食事管理で気をつけるべき栄養素は、フードだけでなくおやつにも同様に当てはまります。
特に注意したいのがリン・ナトリウム・タンパク質の3つと、水分不足も腎臓の状態に大きく関わっています。
この4つに注意が必要な理由をまとめます。

 

リン

リンはタンパク質が豊富な食材に多く含まれており、健康な猫であれば腎臓が余分なリンを尿として排出します。
しかし腎臓の機能が低下すると、リンをうまく排出できなくなり、血液中にリンが蓄積する「高リン血症」を起こしやすくなります。
高リン血症は腎臓病の進行をさらに加速させる要因になるとされており、食事でのリン制限は腎臓病ケアのなかでも優先度の高い管理項目です。

💡一口メモ

リンは肉類・魚介類・乳製品・乾燥おやつ(煮干し・かつおぶし類)に特に多く含まれています。
嗜好性の高い食材ほどリンが多い傾向があるため、注意が必要です。

 

ナトリウム

塩分(ナトリウム)の摂りすぎは血圧を上昇させ、腎臓への負担を増やします。
市販の猫用おやつには嗜好性を高めるために塩分が多めに配合されているものもあるため、原材料表示を確認しましょう。

 

タンパク質

タンパク質は体を維持するために欠かせない栄養素ですが、代謝されると窒素廃棄物(尿素窒素など)が生じます。
この廃棄物を体外に排出するのが腎臓の役割です。
タンパク質の過剰摂取は腎臓の仕事量を増やすことにつながります。
完全にカットする必要はありませんが、腎臓病のステージに応じた適切な量を守ることが重要です。

 

水分不足

水分不足は尿が濃縮された状態を招き、腎臓への負担が高まります。
腎臓病の猫は特に水分摂取量が少なくなりがちです。
おやつを通じて水分を補うことも1つの選択肢です。

ポイント
リンの蓄積は腎臓病の進行を早める可能性がある
ナトリウムの多いおやつは血圧上昇・腎臓負担増につながる
タンパク質の過剰摂取は腎臓の処理負荷を高める
水分量の多いおやつは腎臓ケアのサポートになりやすい

 

腎臓病の猫のおやつ選びのポイント

腎臓病の猫のおやつ選びのポイント

ここまで紹介したリン・ナトリウム・タンパク質・水分の知識をふまえると、実際のおやつ選びでは3つのポイントを意識しましょう。
水分量・与える量・添加物の3点です。

 

水分量

腎臓病の猫は水分不足になりやすい傾向があります。
同じおやつでも、カリカリとしたドライタイプより、ペーストやゼリーなどの水分量が多いタイプを選ぶと、食事を通じて自然に水分を補えます。

 

与える量

どんなに腎臓に優しいおやつでも、与えすぎれば1日の総摂取カロリーやリン・タンパク質量が増えてしまいます。
1回に与える量を少なくしたり、与える頻度を決めたりすることで、リンやナトリウムの摂取量を抑えられます。
おやつはあくまで「補助的な楽しみ」と位置づけ、小さくカットする、少量パックを選ぶなど、量をコントロールしやすい工夫を取り入れましょう。

 

添加物

人工添加物や香料が多く使われたおやつは、腎臓への影響がまだ十分にわかっていない成分を含む場合があります。
できるだけ無添加・シンプルな原材料のものを選びましょう。

💡一口メモ

おやつのパッケージに記載されている「リン」「粗タンパク質」の含有量は、フードと同じように確認できます。気になる場合はかかりつけの動物病院に相談してみましょう。

ポイント
水分量が多いタイプを選ぶと、水分補給にもつながる
1回の量・与える頻度を決めて、総摂取量をコントロールする
添加物が少ない、シンプルな原材料のものを選ぶ

 

腎臓病の猫が避けたいおやつ

腎臓病の猫が避けたいおやつ

ここまで紹介したリン・ナトリウムなどの視点をふまえると、実際に避けたほうがよいおやつには共通する特徴があります。代表的な4つのタイプをみていきましょう。

 

かつおぶし・煮干しなどの乾燥おやつ

かつおぶしや煮干しは嗜好性が高い一方、リンを多く含む傾向があります。少量でも習慣的に与え続けると、リンの摂取量が積み重なりやすいため注意が必要です。

 

塩分が多いおやつ

猫用おやつのなかには、嗜好性を高めるために塩分を多めに配合しているものもあります。原材料表示を確認し、塩分の記載が多いものは頻度を控えめにするのがおすすめです。

 

リンやタンパク質が多いおやつ

肉や魚を主原料とするおやつは、リンやタンパク質の含有量が多くなりがちです。療法食に加えて日常的におやつを取り入れる場合は、含有量が控えめなものを選びましょう。

 

人間用のおやつや味付けされた食品

人間用のお菓子や味付けされた食品は、猫の体格に対して塩分や添加物の量が多くなりやすいものです。腎臓病の猫には与えず、猫用として作られたおやつのなかから選びましょう。

おやつ以外の食べ物について詳しく知りたい方は、「猫の腎臓病で食べてはいけないものまとめ」もあわせてご確認ください。

 

与える際の注意点

与える際の注意点

腎臓病の猫におやつを与えるとき、おやつの選び方と並んで、与え方そのものにも気をつけたいポイントがあります。

 

療法食を優先する

腎臓病の猫にとって、栄養バランスが調整された療法食は治療の土台となるものです。
おやつはあくまで補助的な存在であり、療法食を食べる量が減らないよう、おやつの量やタイミングを工夫しましょう。

 

食欲の変化を見る

腎臓病が進行すると、猫の食欲にムラが出てくることがあります。
療法食を食べてくれないときに、少量のおやつをきっかけとして食事に向き合える場合もあります。

 

カロリーを把握する

おやつのカロリーも、1日に必要なエネルギー量の一部としてカウントしましょう。おやつを与えた分、療法食の量を調整するなど、トータルでのバランスを意識すると体重管理にもつながります。

 

主治医に相談する

おやつの種類や量に迷ったときは、かかりつけの動物病院に相談しましょう。
猫の腎臓病の進行度や体調は個体差が大きいため、その子に合った与え方を一緒に考えてもらうのが安心です。

注意点
おやつを与えることで療法食を食べる量が減ってしまうと、必要な栄養バランスが崩れる可能性があります。療法食が主体であることを忘れないようにしましょう。

ポイント
おやつは療法食を置き換えるものではなく、補助的な存在
食欲の変化に応じて、おやつの使い方を見直す
おやつのカロリーも1日の総量に含めて考える
迷ったときはかかりつけの動物病院に相談する

 

水分補給を兼ねたおやつという考え方

水分補給を兼ねたおやつという考え方

腎臓病の猫にとって、水分補給は食事管理と同じくらい大切なケアのひとつです。おやつを「水分補給を兼ねたもの」として捉えると、選び方の幅が広がります。

 

ペースト

ペーストタイプのおやつは水分量が多く、療法食に混ぜて与えることもできます。猫がそのままでは食べにくい療法食でも、ペーストを少量加えることで食べやすくなる場合があります。

 

ゼリー

ゼリータイプは水分含有量が高く、嗜好性も比較的良いことから、水分摂取が少ない猫におすすめしやすい形状です。たとえば「ジュレッタ」のような水分量の多いゼリータイプのおやつも、こうした選択肢のひとつになります。

 

水分量が多いタイプ

ペーストやゼリーに限らず、スープ状のものやウェットタイプのおやつも、ドライタイプに比べて水分補給に役立ちます。おやつ選びの際は、パッケージに記載された水分含有量も確認の目安になります。

💡一口メモ

猫は本来、砂漠で暮らしていた祖先の影響で、あまり水を飲まなくても生きられるように腎臓で尿を濃縮する仕組みが発達したといわれています。
そのため自発的な水分摂取量が少なくなりやすく、食事から水分を補う工夫が重要とされています。

ポイント
おやつを「水分補給の手段」として捉えると選択肢が広がる
ペースト・ゼリー・ウェットタイプは水分量が多く取り入れやすい
パッケージの水分含有量も選ぶ際の目安になる

 

よくある質問

よくある質問

腎臓病の猫のおやつについて、よくある質問にお答えします。

 

腎臓病の猫にちゅーるをあげてもいいですか?

ちゅーるのような液状のおやつは水分補給に役立ちやすい一方、商品によってリンやナトリウムの含有量が異なります。成分表示を確認したうえで、量や頻度をかかりつけの動物病院に相談しながら取り入れましょう。

 

腎臓病対応のおやつなら与えても大丈夫ですか?

「腎臓ケア」などと表示されたおやつでも、適した量は猫の体調や病気のステージによって変わります。表示だけで自己判断せず、成分表示を確認したうえで動物病院に相談してから取り入れることをおすすめします。

 

腎臓病の猫にかつおぶしをあげてもいいですか?

かつおぶしはリンを多く含むため、積極的にはおすすめできません。どうしても与えたい場合は、ごく少量・低頻度にとどめ、動物病院に相談しながら判断しましょう。

 

おやつを食べると療法食を食べなくなる場合はどうすればいいですか?

おやつを先に与えると、療法食への食いつきが落ちることがあります。療法食を食べたあとのごほうびとして少量与える、量やタイミングを見直すなど、療法食が主体になるよう工夫が必要です。

 

水分補給ゼリーやスープタイプのおやつを使ってもいいですか?

水分量の多いゼリーやスープタイプのおやつは、水分摂取が少ない猫の水分補給におすすめです。成分表示を確認したうえで、療法食に混ぜるなど、無理なく取り入れる方法の1つとして活用しましょう。

 

まとめ

愛猫が腎臓病と診断されると、飼い主さんは「おやつはもう諦めるしかないのかな」と寂しく感じるかもしれません。ですが、おやつは完全に禁止しなければならないものではありません。
かかりつけの動物病院との相談のうえ、リン・ナトリウム・タンパク質・水分という4つの視点で選び方を工夫すれば、療法食を基本としながら無理のない範囲でおやつを続けていけます。
水分量の多いペーストやゼリータイプを取り入れることは、おやつの楽しみと水分補給を両立させる方法のひとつです。
日々のケアの一つとして、当サイトでご紹介しているおやつも上手に活用していただければ幸いです。
気になる症状が続くときや、おやつの与え方に迷ったときは、まずはかかりつけの動物病院へご相談ください。

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著者情報 | 獣医師監修

◆獣医師ニノマユ
獣医師免許を取得後、都内動物病院にて小動物臨床に従事。その後はペット損保会社にて保険査定や犬猫~エキゾチックアニマルまでの健康相談業務などを担当しておりました。現在は、動物業界の課題について広く視野を持ちたいという想いでweb業界にて働いています。大学時代は動物行動管理学研究室に所属。一番好きなのは羊で繁殖~出荷を経験しました。

 

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