猫のストルバイト結石症は、適切な食事管理が予防と治療の鍵です。本記事では、避けるべき食材やおすすめのフード、日常生活で注意すべきポイントを獣医師監修のもと詳しく解説します。
猫のストルバイト結石症はどんな病気?
ストルバイト結石症は、尿石症の一つとして知られています。ストルバイト結石症とは、猫の尿中に含まれる特定のミネラルが過剰になることで結晶化し、それが結石として形成されてしまう病気です。
尿のpHがアルカリ性に偏ることで結石ができやすくなります。結石は尿管を傷つけることがあり、大きさによっては激しい痛みが伴うことや、尿路を閉塞させてしまうこともあるため、早期発見と予防が重要です。
主な原因としては、水分不足、食事、運動不足、ストレス、体質などが挙げられます。具体的な症状には、尿に血が混じる、トイレに頻繁に行くが尿が出ない、お腹を触られるのを嫌がるなどが見られます。これらの症状に気づいた場合は、早めに獣医師に相談しましょう。
猫がストルバイト結石症になった際に食べてはいけないもの一覧
ストルバイト結石は別名「リン酸アンモニウムマグネシウム結石」といいます。この別名からも推測できるように、リン酸やマグネシウム、タンパク質の代謝で生成されるアンモニウムを多く含む食べ物は要注意ということになります。
ミネラルが悪いとは一概には言えず、特定のミネラルが豊富に含まれているとバランスが崩れ、結石の要因となることがあります。適度な塩分、ミネラルは必要です。
昆布、わかめ、ひじき、のりなどの海藻
海藻はマグネシウム含有量が非常に高いため、少量であっても猫にとって過剰摂取となる可能性があります。
また、海藻はアルカリ性食品であり、尿のpHを上昇させる可能性があります。これがストルバイト結石の形成リスクをさらに高める要因となるため、海藻類を多く含む食事はストルバイト結石症の猫には避けるべきです。
大豆、枝豆、レンズ豆などの豆類
豆類はマグネシウムやリンを豊富に含んでいます。過剰な植物性タンパク質摂取は、猫の尿pHを上昇させる可能性がありますので注意が必要です。
また、大豆や枝豆、レンズ豆に含まれる植物性タンパク質は猫の消化に適しておらず、栄養吸収率が低いため、消化器官に負担をかける場合があります。
ハム、ベーコン、ソーセージなどの加工肉
加工肉には、保存料や風味を保つためにリン酸塩や多量の塩が使用されることが多いです。リン酸塩は尿中のリン濃度を高め、ストルバイト結石の原因物質の一つであるリン酸アンモニウムの形成を促進してしまいます。
そして、過剰な塩分は腎臓に負担をかけ、尿の濃縮を促して結石のリスクを高めてしまいます。さらに、加工肉は脂肪分やカロリーが高いため、肥満のリスクもあげてしまいます。肥満は尿石症の要因の一つでもありますから、避けた方が良い食材です。
サバ、イワシなどの青魚
青魚はリンやマグネシウムが豊富に含まれています。白身魚も避けるべきという意見もありますが、青魚の方が含有量が高く、尿石症の猫には避けるべき食材です。
猫が好きな煮干しは特に栄養が凝縮されているため、マグネシウムとリンの含有量が非常に高くなります。一部の煮干しは保存性を高めるために塩分が添加されていることがありますので、注意しましょう。
レバー
レバーは肉類の中でも特にリンの含有量が高い食品であり、高リン食品の代表格です。ストルバイト結石症の管理では、リンとマグネシウムの適切なバランスが重要ですが、リンの過剰摂取は腎臓にさらなる負担をかけます。
特に鶏レバーには、100gあたり300mg以上のリンが含まれており、尿石症や下部尿路疾患の療法食の基準を大きく超えています。また、タンパク質含有量も高いため、尿をアルカリ性にしやすく、結石形成のリスクを高めます。
乾燥したペット用トリーツ
乾燥トリーツ(おやつ)は、水分が少なく栄養が凝縮されています。魚や肉を主成分とするものは、リンやマグネシウム含有量が高く、ストルバイト結石の猫には不適切です。
さらに、一部の商品には保存料や塩分が多く含まれている場合があり、これも猫の健康に悪影響を与える可能性があります。
ストルバイト結石の猫のフードを選ぶ際の注意点5つ
添加物や調味料が少ないフードを選ぶ
ストルバイト結石の猫には、添加物や調味料が少ないフードを選ぶことが重要です。保存料や人工的な香料、着色料は、猫の腎臓や泌尿器系に負担をかけることがあります。
その結果、尿のアルカリ性に傾いてしまい、ストルバイト結石の形成リスクを高める可能性があるのです。
また、塩分や糖分が多い製品は尿を濃縮させ、結石形成を促進する要因となります。成分表示をよく確認し、添加物の少ないフードを選ぶことが好ましいです。
消化に良いフードを選ぶ
ストルバイト結石の猫には、消化に良いフードを選ぶことが重要です。消化しづらい食材は胃酸を分泌する時間が長くなります。消化が困難な食材が猫の体内で処理される過程では、尿のアルカリ化が進みやすくなります。これにより、尿pHがアルカリ性に傾き、ストルバイト結石形成のリスクが増加することが懸念されます。
消化しやすいフードには、良質な動物性タンパク質や繊維が含まれており、猫の胃腸への負担を軽減します。フードを選ぶ際には、成分表示を確認し、胃腸に優しい成分が含まれているかをチェックしましょう。
尿のpHに配慮したフードを選ぶ
ストルバイト結石の猫には、尿のpHを6.0〜6.5の範囲に保つよう設計されたフードが適しています。尿がアルカリ性に傾くとストルバイト結石が形成されやすくなってしまいます。
pHを6.0〜6.5の範囲は、尿中のミネラルが結晶化しにくい環境を作り、結石の形成を抑えるために理想的です。
また、尿のpHを調整するフードは、成分バランスが計算されており、過剰なミネラルや尿をアルカリ化させる成分が制限されています。これにより、猫の泌尿器系に優しい環境を作り、再発防止にも役立ちます。
水分量が豊富なフードを選ぶ
水分量が豊富なフードは、猫の尿を薄めることで結石のリスクを低下させるため、ストルバイト結石症の猫に推奨されます。
猫はもともと水をあまり飲まない習性があり、水分不足が尿を濃縮させ、結石の形成を助長することがあります。特に、ウェットフードなど水分を多く含む食事は、自然に水分摂取量を増やすことができるため効果的です。
また、尿量が増えることで、尿路が洗い流されるような状態になり、結晶化のリスクを減らします。
ミネラルバランスが適切なフードを選ぶ
AAFCO(米国飼料検査官協会)の基準では、猫用フードの理想的なミネラル比率として「カルシウム:リン:マグネシウム=1.2〜1.5:1:0.06〜0.1」が推奨されています。このバランスを保つことで、尿中のミネラルが過剰になりにくく、結石の形成リスクを低減できます。
ただし、療法食や特定の製品には、ストルバイト結石の管理や予防に特化した独自のバランスが設定されている場合もあります。そのため、フード選びの際には製品ラベルを確認し、必要に応じて獣医師に相談することが不可欠です。
ストルバイト結石になった猫におすすめの食べ物・食材
鶏むね肉
鶏むね肉は、ストルバイト結石症の猫に特に推奨される食材の一つです。低脂肪・高タンパクで消化が良く、腎臓にかかる負担を軽減します。
また、タンパク質は尿をアルカリ性に傾けにくい特性があるため、ストルバイト結石の形成リスクを抑える助けとなります。ただし、与える際には必ず加熱し、塩や調味料を使用しない方がよいでしょう。また、適量を守ることも大切です。
かぼちゃ
かぼちゃは低マグネシウム・低リン含有量のため、ストルバイト結石症の猫に適した食材として注目されています。これらのミネラルは結石の形成に関与するため、含有量の少ない食材を選ぶことが予防につながります。
また、かぼちゃは適度な水分を含んでおり、尿の希釈を促進する助けになります。
ただし、かぼちゃは炭水化物を多く含むため、過剰な摂取は肥満やカロリー過多の原因になる可能性があります。適量を蒸すか茹でることで、消化しやすい形で与えた方が良いかもしれません。主食ではなく、補助食として少量を与えるのが理想的です。
療法食
ストルバイト結石は食事療法によって完治を目指せる疾患です。やはり、専用の療法食を与えるに越したことはありません。
ストルバイト結石の治療や予防を目的に開発された療法食は、科学的に設計されており、猫の健康を総合的にサポートします。これらのフードは、マグネシウムやリン、カルシウムの含有量が制限されており、尿のpHを6.0〜6.5の範囲に保つことで結石の形成を抑制します。
さらに、抗酸化成分や特定の栄養素が泌尿器系の健康を維持し、再発リスクを減少させる助けとなります。飼い主としては、療法食を選ぶ際にパッケージの成分表を確認し、獣医師の指導を受けることが大切です。
ストルバイト結石になった猫に日常で注意してほしいこと3選
水分摂取量を増やす
猫はもともと水をあまり飲みたがらない動物ですが、水分摂取量を増やすことはストルバイト結石の予防にも治療にも非常に重要です。
水を飲みやすくするためには、飲み水を常に新鮮に保つことも効果的です。循環式の給水器を設置したり、細目に水を換えたりするとよいでしょう。また、水飲み場を複数作ることで、猫が気軽に水を飲める環境を整えましょう。
氷を入れて水を冷やす、フレーバーウォーターを試すなど、猫の興味を引く工夫も有効です。
▼お水をあまり飲んでくれないコには、犬猫用ゼリージュレッタがおすすめです。
いつものフードに添えて与えるだけで、必要な水分量を摂取できます。「チキン」「かつお」「ヤギミルク」など、豊富なフレーバーが用意してあるのでおいしく水分補給できる「食べるお水」です。
ストレスを減らす
猫のストレスは泌尿器系疾患、特に特発性膀胱炎や尿石症と関連があることが研究で示されています。静かな専用スペースを設ける、規則的な遊びの時間を作る、猫じゃらしやトンネル型おもちゃを活用して猫の本能を刺激するなど、環境改善を行いましょう。
また、家庭内の環境を清潔に保つことや、家族が穏やかに接することで、猫が安心して生活できる環境を整えることも効果的です。
適度に運動させる
ストルバイト結石症の予防や治療には、適度な運動を取り入れることも重要です。
キャットタワーなどを使用して猫が自然に運動できる環境を整えましょう。定期的に遊びの時間を設け、猫じゃらしやレーザーポインターを使用して、体を動かす習慣をつけることも効果的です。
運動によってストレスも軽減され、全身の健康を維持する助けになります。さらに、運動後には水分を取る機会を増やすため、新鮮な水をすぐに提供すると良いでしょう。
ストルバイト結石の猫の療法食について
ストルバイト結石の猫ちゃん用の療法食ってどんな食事?
ストルバイト結石は、尿中のマグネシウム、アンモニウム、リンが高濃度で存在し、尿のpHがアルカリ性に傾いた場合に形成されやすい病気です。療法食はこのメカニズムを考慮して設計されています。
具体的には、尿をpH 6.0〜6.5に保つよう設計されており、マグネシウムやリンの含有量が低減されています。これにより、結晶が形成されるリスクを最小限に抑えます。
どのような療法食を選択するかは猫の健康状態や生活環境に応じて獣医師と相談しながら決定するのが一般的です。
ストルバイト結石の猫は療法食をいつまで食べるべき?
療法食を与える期間は、個々の症状や再発リスクに依存します。結石が溶解した後も、再発を予防するために、一定期間は療法食を継続することが一般的です。再発リスクが高い場合、療法食を長期間あるいは生涯続ける必要がある場合もあります。
定期的な尿検査(尿比重、pH、結晶の有無の確認など)が重要で、これによって結石の予防効果が確認されるだけでなく、療法食の変更や中止のタイミングも判断されます。
また、療法食を終了した後も、低マグネシウムや低リンの食事を選ぶことが推奨されることがあります。獣医師の指導の下、個別の健康状態に合わせた対応が必要です。
ストルバイト結石の猫は療法食だけしか食べたらダメなの?
療法食は特定の病態を管理するための食事であり、その効果を最大限に発揮するには単独で与えることが原則です。一般のフードやおやつを与えると、尿のpHやミネラルバランスが乱れる可能性があり、結石再発のリスクが高まります。
しかし、猫が療法食を食べ飽きる場合や嗜好性の問題が生じた場合、獣医師の指導の下で特定のスナックやトッピングが許可されることもあります。例えば、水分補給のための無塩のスープや適切な療法食のウェットタイプへの切り替えなどが考慮されることがあるでしょう。
療法食をメインとしながら、猫の健康を第一に考えた柔軟な対応が求められます。いずれの場合も、猫の健康を守るために獣医師との相談を重ねることが重要です。
まとめ
猫のストルバイト結石症は、尿中ミネラルの過剰やpHの乱れで発生します。海藻や加工肉などの避けるべき食材や、水分摂取量を増やすこと、療法食の活用が予防と治療の要です。
特に、尿のpH調整や適切なミネラルバランスを考慮した食事管理が重要で、獣医師の指導のもと対策を進めることが推奨されます。
猫のストルバイト結石症は、食事と生活習慣でリスクを大きく減らせる疾患です。適切なフード選びや水分補給を心がけ、愛猫の健康を守りましょう。
監修者情報(獣医師)