【獣医師監修】腎臓病の犬が食べてはいけないもの一覧を紹介!おすすめの食材・食事も

【獣医師監修】腎臓病の犬が食べてはいけないもの一覧を紹介!おすすめの食材・食事も

腎臓病を患っている愛犬の食事内容には注意が必要です。腎臓病になると、腎臓が正常に機能しなくなり、体内の老廃物を排出する能力が低下します。

その結果、特定の栄養素がからだに残ってしまい、症状が悪化する可能性があるのです。

本記事では、腎臓病の犬が食べてはいけない食材や推奨される食事について、獣医師監修のもと詳しく解説します。ぜひ愛犬の健康管理に役立ててください。

腎臓病の犬が食べてはいけないもの一覧

腎臓は体の「フィルター」として働いており、血液から老廃物を取り除く役割を持っています。

しかし、腎機能が低下すると、フィルター機能が十分に果たされなくなるため、特定の栄養素が体内に過剰に残り、症状の悪化を招く可能性があります。

そのため、腎臓病の犬は特定の栄養素や成分が体内に過剰に蓄積することを避ける必要があるのです。

腎臓病の犬が避けるべき栄養素は主に「リン」「たんぱく質」「ナトリウム」「カリウム」などです。
以下に、これらの栄養素を多く含む食べ物を解説していきます。

リンを多く含む食べ物
  • 乳製品(特にチーズやヨーグルトなど)
  • 魚卵や内臓類(レバーなど)
高たんぱくな食べ物
  • 赤身肉(特に牛肉や豚肉)
  • 乾燥ジャーキーやソーセージ
  • レバー
ナトリウムを多く含む食べ物
  • 加工食品(ハム、ソーセージなど)
  • 味付き肉(加工された味付き牛肉や豚肉など)
  • チーズ
  • かつおぶし
カリウムを多く含む食べ物
  • バナナ
  • メロン
  • アボカド
  • 海藻
  • ほうれん草

 

1.リンを多く含む食べ物(乳製品、魚卵、内臓類など)

リンは、犬の健康にとって重要なミネラルの一つですが、腎臓病の犬は過剰に摂取すべきではありません。

リンは細胞膜を構成する成分であると共に、カルシウムと協力して骨や歯の健康を維持するのに必要な栄養素で、通常は腎臓によって尿中に排泄されます。

しかし、腎機能が低下している犬の場合、リンが体内に溜まりやすくなり、高リン血症を引き起こすリスクがあります。

食材例:

  • 乳製品(特にチーズやヨーグルトなどの加工乳製品):乳製品には多くのリンが含まれており、腎臓病の犬には不向きです。
  • 魚卵や内臓類:特に魚の卵やレバーなどはリンの含有量が非常に高く、避けるべき食品です。

高リン血症は、カルシウムとのバランスを崩してしまうため、骨の異常や、臓器や血管の石灰化(血中にカルシウムが増え、臓器や血管に沈着すること)を引き起こし、症状を進行させる可能性があります。

リンの制限は、腎臓病の進行を遅らせるために非常に重要です。腎臓病の治療にはリンを適切に管理することが求められます。

リンの管理は、獣医師と相談しながら適切な食事プランを立てることが重要です。

2.高たんぱくな食べ物(赤身肉、乾燥ジャーキー、レバーなど)

たんぱく質は体に必要な栄養素であり、筋肉や皮膚の維持には欠かせません。

しかし腎臓病の犬にとって負担が大きい食材の一つですので、多く摂取すべきではありません。

たんぱく質の代謝によって生成される老廃物は、腎臓が正常に機能している場合は尿として排出されますが、腎臓病の場合はこの排出がスムーズに行えなくなります。

その結果、体内に有害な老廃物が溜まってしまいます。老廃物が体内に蓄積し続けると、尿毒症のリスクが高まります。

尿毒症とは、重い腎臓病の最終形態と認識して良いでしょう。そのために高たんぱくな食材を継続的に与えないようにすることが必要です。

食材例:

  • 赤身肉(特に牛肉や豚肉):これらの肉類は高たんぱくであり、腎臓病の犬にとって大きな負担となるため、多量に摂取すべきではありません。
  • 乾燥ジャーキーやソーセージ:これらは保存料や調味料が多く含まれている上、高たんぱく食品であるため、注意が必要です。
  • レバー:レバーは鉄分やビタミンが豊富ですが、高たんぱく質であり、リンも豊富ですので腎臓病の犬には不適切です。

赤身肉やレバーなどの内臓類は、たんぱく質の含有量が高いため、腎臓病の犬には避けるべき食材です。

獣医師の指導のもと、たんぱく質を制限した食事を与えることで、腎臓への負担を軽減し、病状の進行を遅らせることが期待されます。

3.ナトリウムを多く含む食べ物(ハム、チーズ、かつおぶし、缶詰食品など)

塩にも含まれるナトリウムは、体液のバランスを維持するために必要な成分ですが、腎臓病の犬は過剰に摂取すべきではありません。

ナトリウムが多すぎると血圧が上昇し、腎臓への血流が悪化することで、さらなる腎機能の低下を招く恐れがあります。

食材例:

  • 加工食品(ハム、ソーセージなど):これらには非常に多くの塩分(ナトリウム)が含まれており、腎臓病の犬には不適切です。
  • 缶詰食品:缶詰のスープやソースには塩分が多く含まれているため、腎臓病の犬には適さない食材です。
  • スナック菓子:スナック菓子には塩分(ナトリウム)が多く含まれているため、健康な犬にも不適切で、腎臓病の犬には特に避けるべきです。
  • 味付き肉(加工された味付き牛肉や豚肉など):これらの食品には大量の塩分が含まれており、腎臓病の犬には避けるべき食材です。
  • チーズ:チーズは高塩分であり、さらにリンも多く含まれているため、腎臓病の犬には不適切です。
  • かつおぶし:かつおぶしは高ナトリウム・高リン食品であり、腎臓病の犬には不適切な食材です。

ナトリウムを過剰に摂取すると、高血圧や浮腫(むくみ)などのリスクも高まり、症状が悪化します。

腎臓病の犬には無塩または低塩の食品を選び、塩分の摂取量を慎重に管理することが必要です。

4.カリウムを多く含む食べ物(バナナ、メロン、アボカドなど)

カリウムは、ナトリウムと同じく体液を構成する成分の一つです。筋肉や神経の機能を維持するために不可欠なミネラルであり、特に心臓の機能の調節で役立っています。

しかし、腎臓病の犬が多く摂取すると問題を引き起こす可能性があります。

腎臓がカリウムを適切に排泄できない場合、高カリウム血症が生じ、心臓に異常をきたす可能性があるのです。

避けるべき食材例:

  • バナナ:カリウムの含有量が非常に高く、腎臓病の犬には不適切な食材です。
  • メロン:水分が多いフルーツである一方、カリウムも多く含まれているため、腎臓病の犬には注意が必要です。
  • アボカド:カリウムの含有量が非常に高く、腎臓病の犬には適していません。
  • 海藻:リンと塩分が多く含まれます。
  • ほうれん草:ビタミンやミネラルが豊富である一方、カリウム含有量が高いため、腎臓病の犬には適さない食品です。

フルーツだけでなく野菜にも気を配る必要があります。

特に心臓に対するリスクを避けるために、日々の食事で適切にカリウムを制限することが求められます。

獣医師と相談しながら、カリウム量を管理した食事を心がけましょう。

腎臓病の犬におすすめの食事・食材5選

腎臓病の愛犬におすすめの食事・食材を5つ紹介します。

  1. 療法食
  2. 卵白
  3. 白米
  4. キノコ類(エリンギやシイタケなど)
  5. ささみ

1.療法食

まずは腎臓病の犬専用のリン・低たんぱく質療法食が最も推奨されます。これらのフードは、腎臓病に配慮して開発されており、リンやナトリウムを抑え、必要な栄養素をバランスよく配合しています。

 療法食はそのまま与えるのが基本ですが、必要に応じて少量の水やスープでふやかすことで、食欲不振の犬にも食べやすくなります。

2.卵白

卵白は、腎臓病の犬にとって非常に優れた食材の一つです。

卵白は低リン・低カリウムでありながら、質の高いたんぱく質を提供するため、腎臓病の犬に対しても負担が少ない食材といえます。

卵白は生物価が高く、体に吸収されやすい高品質なたんぱく質を含んでいます。腎臓病の犬にはたんぱく質の摂取量を制限しながら、必要な量を効率的に摂取させることが求められますが、卵白はその要件を満たします。

卵黄はリンが多く含まれているため避けるべきです。卵を使用する場合は、必ず卵白のみを与え、卵黄は除いてください。

フライパンで油を使わずに、少量の水で軽くスクランブルエッグのように調理するのも良い方法です。卵白を焼く際には、油やバターなどの脂肪分を使わないように注意してください。茹でたり蒸したりしても良いでしょう。

3.白米

白米は、腎臓病の犬にとって非常に消化が良く、エネルギー源としても適しています。リンやナトリウムが少なく、栄養バランスを整えるのに役立ちます。さらに脂肪がほとんど含まれていないため、腎臓にかかる負担を軽減しつつ、必要なカロリーを補うことができます。また、腎臓病の犬に多く見られる食欲不振の改善にも役立ちます。

白米を与える際は、炊きすぎず、柔らかく仕上げることがポイントです。犬が食べやすいように、他の食材と混ぜて与えることも良いアイデアです。

白米は他の栄養素と組み合わせてバランスの取れた食事を作る際にも便利です。

4.キノコ類

キノコ類も腎臓病の犬におすすめの食材の一つです。何か腎臓に良い効果があるというわけではなく、他と比べてリスクが低いという点で挙げています。

特にエリンギやシイタケなどの低カロリーで食物繊維が豊富なキノコは、消化を助け、便通を良くする効果があります。腎臓に対して特別な負担をかけずに使用できる食材です。

また、抗酸化作用が強い成分を含んでおり、全体的な健康をサポートする役割も果たします。

キノコ類には多くの種類がありますが、与える際には必ず油や塩、調味料は一切使用せず、茹でるか蒸して、食べやすい大きさに切ってから与えることが大切です。

生のキノコは犬にとって消化不良を起こすことがあるため、加熱することで安全に摂取できます。

5.ささみ

ささみは、肉類の中では比較的リンが少ない方です。

少量であれば腎臓病の犬に与えることができますが、たんぱく質とリンの制限を考慮し、他の食材と組み合わせて慎重に管理する必要があります。

低リン・低たんぱくの療法食をベースとし、ささみは補助的に取り入れるのが良いでしょう

療法食に飽きてしまった腎臓病の犬に、ささみのトッピングをおすすめすることはよくあります。

ささみは茹でるか蒸すのが最適です。塩や調味料は一切使用せず、シンプルに加熱調理することが大切です。焼いたり、揚げたりすると、脂肪やたんぱく質が変化し、消化に負担をかける可能性があります。

犬の腎臓病の「予防」におすすめの食材・食事3選

腎臓病の予防は、犬の健康維持にとって重要です。以下に、腎臓病を予防するためにおすすめの食材を紹介します。

  • 水分をしっかりとる(水分補給用ゼリー「ジュレッタ」
  • オメガ3系不飽和脂肪酸を含む食材(魚油や亜麻仁油など)
  • 食物繊維が多く含まれる食材(オートミールや玄米、リンゴ、イチゴなど)

1.水分をしっかりとる

食材とは言えませんが、腎臓病の予防には、十分な水分摂取が欠かせません。

食材を気にするより先に水分が十分に摂れているか確認しましょう。

水分は腎臓の機能を助けるだけでなく、尿の生成を促進し、毒素の排出を助けます。犬が常に新鮮な水を飲むことができるよう、環境を整えることが重要です。

▼水分摂取におすすめなのが、犬猫用ゼリー「ジュレッタです。1日に必要な水分量を摂取ができ、飲んだ量も視覚的にわかります。また、さまざまなフレーバーがあるため、飽きずにおいしく水分補給ができます。
※ただし、病院から「タンパク質摂取制限」を指示されている犬猫に与える場合は、商品ページを参照のうえ獣医師にご相談ください。

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2.オメガ3系不飽和脂肪酸を含む食材

オメガ3系不飽和脂肪酸は、炎症を抑える効果があり、腎臓病の予防に非常に有効です。

特に、魚油や亜麻仁油にはオメガ3が豊富に含まれており、犬の健康に良い影響を与えます。これらの油を食事に取り入れることで、腎臓の健康を維持することが可能です。

3.食物繊維が多く含まれている食材

食物繊維は消化を助け、腎臓病のリスクを軽減する要素として重要です。特に野菜や果物に多く含まれる食物繊維は、腎臓の負担を軽減し、全体的な健康をサポートします。

オートミールや玄米、果物(例:リンゴやイチゴ)などの食材を取り入れることが、腎臓病予防に寄与します。

犬の腎臓病に食べても良いお肉とは?

腎臓病の犬に与えるお肉は、低たんぱく質でありながら、良質な脂肪を含むものが理想です。鶏肉の胸肉や、牛バラ肉、豚肉の脂身の少ない部分などが適しています。良くお勧めするのは前述したささみです。

また、調理する際には、塩分や調味料を控えめにし、犬が消化しやすいように柔らかく調理しましょう。

犬が腎臓病でも食べられる魚は?

腎臓病の犬には、たんぱく質含量が少なく、オメガ3系脂肪酸を多く含む魚が推奨されます。サーモンやマスなどの脂肪が豊富な魚がおすすめです。

これらの魚は、抗炎症作用や心血管の健康を促進するため、腎臓の機能をサポートします。

犬が腎臓病でも食べられる野菜・果物とは?

腎臓病の犬には、消化に良く、栄養価が高い野菜や果物が適しています。

例えば、キャベツやブロッコリー、リンゴ、ブルーベリーなどは、腎臓への負担が少なく、健康に良い影響を与える野菜・果物です。これらを食事に取り入れることで、バランスの良い栄養摂取が可能です。

犬が腎臓病のとき、ご飯のトッピングは何が良い?

腎臓病の犬にとって、食事のトッピングは工夫次第で栄養価を高めることができます。無塩の茹でた鶏肉などがおすすめです。

大豆などを使ったトッピングは、少量であればたまにトッピングしても良いかもしれません。栄養を補完しつつ腎臓への負担を軽減するのに役立ちます。

犬の食事に彩りを加えることで、食欲を増す効果も期待できます。

腎臓病の進行度合いや個体差もありますので、必ず獣医師に相談してから使用してください。

腎臓病の犬に日常で注意してほしいこと3選

食事以外に日常で注意してほしいことを3点ご紹介します。

  1. 過度な運動をしない
  2. 適量の水分補給をする
  3. 歯周病をケアする

1.過度な運動をしない

腎臓病の犬にとって、過度な運動は負担となることがあります。

特に急激な運動は腎臓へのストレスを増加させるため、散歩や運動は穏やかなペースで行うことが大切です。

適度な運動は健康維持に役立ちますが、犬の体調をよく観察し、無理のない範囲で行いましょう。

2.適量の水分補給をする

水分不足は腎臓に大きな負担をかける要因となります。

犬が常に水分を摂取できる環境を整えることが重要です。新鮮な水をこまめにあげて、水を飲む習慣を身につけさせることが大切です。

3.歯周病をケアする

腎臓病の犬は、口腔内の健康にも注意が必要です。

歯周病は全身に影響を与える可能性があるため、定期的に歯のケアを行いましょう。歯磨きや歯石除去を行うことで、結果として腎臓への影響を軽減することができます。

まとめ

腎臓病といってもその進行度や犬ごとの体質、状態、その他の持病や犬種によって最適な食生活はそれぞれ異なるのが難しい点です。

かかりつけの動物病院と相談し、それぞれの愛犬に合った方法で食生活を楽しんでほしいですね。

腎臓病の犬にとって、食事は健康管理において重要な要素です。
まずは一般論として、腎臓病の犬が食べてはいけないものや、逆に積極的に摂取すべき食材を理解することで、愛犬の生活をより良いものに変えられます。

水分補給や食物繊維の摂取、バランスの取れた栄養摂取などを心掛け、定期的な健康チェックを行いながら、愛犬との生活を楽しんでいきましょう。

監修者情報(獣医師)

◆獣医師ニノマユ
獣医師免許を取得後、都内動物病院にて小動物臨床に従事。その後はペット損保会社にて保険査定や犬猫~エキゾチックアニマルまでの健康相談業務などを担当しておりました。現在は、動物業界の課題について広く視野を持ちたいという想いでweb業界にて働いています。大学時代は動物行動管理学研究室に所属。一番好きなのは羊で繁殖~出荷を経験しました。

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