「うちの猫、腎臓が心配で…」と感じている飼い主さんは、近年「AIM」という言葉を目にすることが増えているかもしれません。AIMは猫の腎臓病に深く関わるタンパク質として研究が進んでおり、サプリメントや注射といった形での活用も話題になっています。
この記事では、AIMの基本的な働きから猫の腎臓病との関係、サプリメントと注射の違いまで、飼い主さんの目線でわかりやすくまとめました。
動物病院での相談前に少し基礎知識が欲しいという方はぜひ最後までお読みください。
※2026年6月現在公開されている情報もとに執筆しています
AIMって何?
AIMとは、体の中で免疫を担うマクロファージという細胞が分泌するタンパク質のひとつです。
近年、猫の腎臓病との関係が少しずつ明らかになってきており、獣医療の世界で大きな注目を集めています。
AIMの正式名称と発見の背景
AIMの正式名称は「Apoptosis Inhibitor of Macrophage(アポトーシス抑制タンパク質)」といいます。
東京大学の宮崎徹教授らの研究グループが発見し、長年にわたって研究が続けられています。猫との深い関わりが明らかになったのは比較的最近のことですが、今では世界中の獣医学研究者が注目しているテーマのひとつです。
AIMの腎臓への役割
AIMは、体の中で傷ついたり死んだりした細胞の「がれき(デブリ)」を取り除く役割を担っています。
腎臓の中には無数の小さな管(尿細管)があり、そこに死細胞のがれきが詰まることで炎症や機能低下が起こることが知られています。
AIMはこの「がれき」にくっついて、尿細管上皮細胞などによる除去を促進する働きをすると考えられています。
健康な状態ではこの掃除の仕組みが正常に機能しますが、AIMの働きが弱まると、がれきが蓄積されやすくなってしまうと考えられています。
もっと詳しく知りたい方向け~なぜ猫はAIMが機能しにくいのか~
犬や人間と比べると、猫はAIMが特に機能しにくいといわれています。
猫の血液中のAIMは「IgM(免疫グロブリンM)」という別のタンパク質とくっついた状態で存在しています。
IgMは免疫システムを支える抗体のひとつですが、猫のAIMはこのIgMと結合した状態では本来の機能を発揮しにくいと考えられています。
つまり猫は生まれつきAIMが動きにくい体の仕組みを持っており、これが犬や人間と比べて猫に慢性腎臓病が多い理由のひとつではないかと考えられています。
なお、この仕組みについては現在も研究が進んでおり、すべてが解明されているわけではありません。
猫の腎臓病とAIMの関係
猫は腎臓病になりやすい動物です。前述したようにその背景にはAIMの機能しにくさが関わっている可能性が指摘されています。
ここでは、猫の慢性腎臓病とAIMの関係について整理します。
注意点
このセクションで紹介する内容は、現在進行中の研究に基づく情報です。AIMと腎臓病の関係はまだ解明途中の部分も多く、すべての猫に同じ効果が期待できるとは限りません。治療や予防の判断は、必ずかかりつけの動物病院の獣医師にご相談ください。
慢性腎臓病(CKD)との関係
猫の慢性腎臓病(CKD)は、非常に多くの猫が抱える病気です。
10歳以上の猫では3〜4頭に1頭がCKDを発症するともいわれており、猫を飼う上で避けて通れないテーマのひとつといえます。
慢性腎臓病(CKD)とは
CKD(Chronic Kidney Disease)とは、腎臓の機能が長期間にわたって徐々に低下していく病気です。一度失われた腎機能は基本的には回復しないため、早期発見・早期対応で進行を遅らせることが重要とされています。
AIMの研究によると、腎臓の尿細管に死細胞のがれきが詰まることがCKDの一因になると考えられており、AIMがこのがれきの除去を助ける可能性が注目されています。AIMが機能しにくい猫では、このがれきが蓄積されやすく、腎機能の低下につながりやすいと考えられています。
AIM研究の現状
AIMと猫の腎臓病に関する研究は、東京大学の宮崎徹教授らのグループを中心に進められています。マウスを用いた実験では、AIMを投与することで急性腎障害からの回復が促進されることが確認されており、猫への応用を目指した研究も続いています。
現在は、AIMを補う形でのサプリメントや注射の開発・検証が進んでいる段階です。
一部の製品はすでに市場に登場していますが、長期的な有効性や安全性についてはまだ研究が続いており、「効果が完全に証明された治療法」として確立されているわけではありません。
愛猫のためにAIMに興味を持つことは自然なことですが、情報を正しく理解したうえで、獣医師と一緒に判断していくことが大切です。
猫のAIMサプリメントと注射の違い
猫のAIMを補う方法として「サプリメント(内服)」と「注射」がよく話題になりますが、実はこの2つは仕組みがまったく異なります。
それぞれの違いを正しく理解することが、適切なケアを選ぶうえでとても大切です。
AIMは飲み薬にできない理由
AIMはタンパク質でできています。タンパク質を経口摂取すると、胃や腸で消化・分解されてしまうため、AIMそのものを飲み薬として体内に届けることは現時点ではできません。そのため、AIMタンパク質を直接補う方法は注射(静脈投与)に限られています。
AIMサプリメント・AIM活性化フードとは
市場で「AIMサプリメント」「AIM対応フード」などと呼ばれる製品は、AIMタンパク質そのものを含む製品ではありません。
これらは、猫の体内にもともと存在しているAIMに対して、AIMの働きをサポートすることを目的とした成分が配合されています。
体内のAIMはIgMと結合した状態では機能しにくいため、その働きを引き出すことを目指した製品です。
2024年12月には、AIM活性化成分を配合した早期腎臓病(IRIS ステージ1〜2)向けの療法食も発売されており、獣医師の指導のもとで取り入れる選択肢として注目されています。
AIM注射とは
AIM注射は、AIMタンパク質そのものを直接静脈に投与する方法で、動物病院での処置が必要です。
サプリメントや活性化フードとは根本的に異なり、AIMを体外から直接補うアプローチです。
現在は実用化に向けた研究が進められていますが、臨床で一般的に使用できる段階には至っていません。
どちらを選ぶべきか
2つのアプローチは「体外からAIMを補う(注射)」か「体内のAIMの働きをサポートする(サプリメント・フード)」かという点で根本的に異なります。
現時点ではどちらが優れているとは断言できず、愛猫の腎臓の状態・病気のステージによって適切な選択は変わります。
気になる場合はまず、かかりつけの動物病院に「AIMについて相談したい」と伝えてみるところから始めてみてください。獣医師が愛猫の状態を踏まえたうえで、今できる選択肢を一緒に考えてくれるはずです。
注意点
市場には「AIM」を冠した製品が複数ありますが、AIMタンパク質そのものを含む内服薬は現時点では存在しません。製品を選ぶ際は「何を目的とした製品か」を確認し、必ずかかりつけの獣医師に相談してから取り入れるようにしてください。
ポイント
サプリメント・フードと注射の主な違い
- AIMサプリメント・活性化フード:AIMタンパク質自体ではなく、体内のAIMの働きをサポートする成分を含む。自宅で継続しやすい
- AIM注射:AIMタンパク質そのものを静脈投与。動物病院での処置が必要。現在実用化に向けた研究段階
- 共通点:どちらも研究・開発途上であり、効果には個体差がある。自己判断で始めず、必ず獣医師に相談して判断する
飼い主が今できること
猫の腎臓病とAIMの研究が進む一方で、日々の腎臓ケアは今この瞬間から始められます。特別なことでなくても、毎日の小さな積み重ねが愛猫の腎臓を守ることにつながります。
日常の腎臓ケア
腎臓の健康を支えるために、飼い主さんが日常的にできることがいくつかあります。
まず大切なのは、水分をしっかり摂らせることです。
猫はもともと水をあまり飲まない動物ですが、水分不足は腎臓への負担につながります。ウェットフードの活用や、水飲み場を複数か所に置くなどの工夫が効果的です。
また、定期的な健康診断も欠かせません。
慢性腎臓病は初期段階では症状が出にくく、気づいたときにはかなり進行していることも少なくありません。7歳を超えたら少なくとも年に1〜2回、できれば半年に1回は血液検査・尿検査を受けることをおすすめします。
腎臓病の早期発見が大切な理由
一度失われた腎機能は回復しないため、早期に発見して進行を遅らせることが治療の基本になります。症状が出る前から定期的に検査を受けることで、早い段階での対応が可能になります。
動物病院への相談タイミング
以下のような様子が見られたときは、早めにかかりつけの動物病院へ相談することをおすすめします。
- 水をよく飲む・トイレの回数や量が増えた
- 食欲が落ちてきた・体重が減ってきた
- 元気がなく、ぐったりしている時間が増えた
- 嘔吐や口臭が気になる
注意点
AIMサプリメントや腎臓ケアを目的とした療法食を始める場合も、自己判断で選んで与えることはおすすめできません。愛猫の腎臓の状態や病気のステージによっては、適切でない製品を選んでしまう可能性があります。必ず獣医師に現在の状態を確認したうえで、どのようなケアが適切かを相談してから取り入れるようにしましょう。
まとめ
「うちの猫が腎臓病になったらどうしよう」「AIMって何だろう、何か役に立てることはないかな」と調べ始めた方も多いのではないでしょうか。大切な家族のためにできることを探すその気持ちは、とても自然で素晴らしいことだと思います。
AIMは猫の腎臓病に深く関わるタンパク質で、その機能を補ったり活性化させたりするアプローチが研究されています。
市場に出回る「AIM系製品」にはサプリメント・活性化フード・注射とさまざまな種類があり、それぞれ仕組みがまったく異なります。
どれが愛猫に合っているかは、腎臓の状態やステージによって変わるため、自己判断で始めるよりも、まず獣医師に相談することが一番の近道です。
研究はまだ進行中ですが、日々の水分補給や定期的な健康診断など、今日から始められるケアも確かにあります。
完璧なケアを目指すより、愛猫と一緒に少しずつ取り組んでいくことが長続きする秘訣です。
気になる症状が続くときは、ひとりで悩まずに、まずはかかりつけの動物病院へご相談ください。そのうえで、日々のケアの一つとして、フードやおやつも上手に活用していただければ幸いです。
著者情報 | 獣医師監修






